七十年代アメリカ

映画をみた。東京でみた。横須賀近郊からだと往復二千円弱の場所だった。鑑賞チケットも二千円だった。茶を飲んだりして結局五千円くらいだ。

いい映画だった。どう捉えてよいのか、時代の差もあり悩ましい映画だった。最終的に、あれはコメディ、ブラックジョークのきついコメディだと思うことにした。七十年代のアメリカの現実は、特に女性の現実は厳しすぎて、悪い冗談として捉えたかった。

最近読んだベル・ジャーという本もキツイ内容だった。それを楽しく読んでしまうことも、すいすい読めるように書かれていることもきつかった。ベル・ジャーは六十三年に出版された。つまり、年代の問題ではなかった。

終映後に電気街を少し歩いて、古いマックブックのメモリーが幾らするのか探してみた。ネットより八百円ほど安かった。ラジオ会館の狭い小路を歩いて、分かりもしないトランジスタだとか、コイルだとか、コンデンサーだとかを眺めた。

神田を抜けて神保町まで歩くつもりだったけど、暑すぎて無理だった。引き返し電車に乗った。そんなだったら、映画で会った友人たちと地元に帰り杯でも交わせば良かった。

横須賀にもどって行きつけの喫茶店でコーヒーを飲んだ。砂糖を入れて少し待ち、それから掻き回した。もみあげをテクノカットした客が入ってきてカレーを頼んだ。声に聞き覚えがあるような気がしたけれど、知らない人だった。お金を払って外へ出た。

坂を上り、別の店で炭酸を飲んだ。お金を払って外へ出た。

商店街を歩き別の店へ入った。なにも買うものがなかったのでお金を払わずに店を出た。

坂を下って、やっているかもしれない店へ向かった。やってなかった。

扉が五センチほど開いていた。勇気を振り絞って覗いてみた。目があった。向こうはこちらの五センチ幅しか見えないから怪訝な顔をしていた。十五センチくらい開けて「こんばんわ」と声をかけた。「あぁ」「おぉ」と二人は言って中へ入れてくれた。「ワイン飲みますか」というのでもらった。友人がお祝いにくれたボトルだからということで、お金は払えずに店を出た。

駅まで歩いた。人が二人、前をゆっくり歩いていたので坂道で早足をして追い越した。汗をかいた。暗闇で警官が不審車を照らしていた。特急が通過していった。普通が止まった。乗った。

改札でパスモが残金238円。

fine

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