蟻に噛まれて思うのは

食べる気かね?ということです。

もし仮に、何も感じず動けもせずに

この布団で、横になっているしかないとするなら

君は食べ続けるつもりかね?ということです。

 

摘んだ菓子の屑でも落ちているのかと

掃除機をかける朝

 

本の収まった木箱を移動

 

整理の途中で拾い読み始まる

 

「君をあやつっている者は君の内に隠れているものであることを記憶せよ。それが言葉であり、生命であり、いわば人間そのものなのである。」━━M・アウレーリウス 自省録 神谷美恵子訳 岩波文庫

 

「バルトによれば、それはたった一言で言えてしまうことを敢えて口にしないことで成り立つ営みなのだ ━━中略━━ 直接語るのではなく、決して語ろうとしないことによってしか、そこに自分の思いを刻み込むことはできないのである。」━━ つかもと まさのり・フランス文学者 ユリイカ 青土社

 

ボードレールはサンフランシスコにハンバーガースタンドを開いた。

そしてパンの間に花を挟んだ。

人が店にやってきて言った、

「ハンバーガーを一つ、タマネギをたくさん入れて」

ボードレールはかわりにフラワーバーガーを出し

人々は言ったものだ、

「いったいこれはどういうたぐいのハンバーガースタンドなんだ?」

━━R・ブローティガン チャイナタウンからの葉書 池澤夏樹 訳 ちくま文庫

 

本は埃を少しばかり落とされ、木箱は元の位置へ戻った。

掃除は途中だったけれど、窓からは風が入った。

粒入りのジュースを狭くなった夏の冷蔵庫から取り出し、一息に飲む。

 

真剣に真剣に集中すれば、蚊に刺されていない皮膚の一部を膨らませることができるかもしれない。

 

町へ出る。

 

古物屋でレコードと掌に収まるていどの陶器、シルク。

それから、700円と値段のついた何かを物色したはずだけれども、今となっては思い出せない。

横断歩道を止まらずにやり過ごす車。

 

ATMでお金をおろし、交差点で信号を待つ。

荷物を二つ持った軍人が、歩行者用信号を無視。

クラクションを長めに鳴らした車一台。

歩道の恋人たちが何か囁く。

 

 

喫茶店へ

 

髭のある知人の髭が無くなっている。

まるメガネ。

イタリアビールの空き瓶。ピクルス。

緊張と本番とお粥についての論考。

 

 

本屋さんへ

 

四方田犬彦氏の初小説掲載紙を探してパラリ

 

スーパーへ

 

トマト・ミディ298円、ヨーグルト、バナナ、11日までの食パン、牛肉。

ティッシュとなりのキッチンペーパー

 

遮断しきれなかった醜いもの。

一掃するために美しいもの。

 

影がくすぐったい。

 

タイピング

炊きたてのご飯

 

 

 

 

 

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