前世は猿か白米だったんじゃないかと思っています。
それは、バナナと納豆を好んで食べるからです。
その二つにヨーグルトを入れて掻き混ぜると多分、ボクができます。
燃えるゴミ(生ゴミ)の日に、少し寝坊したので慌ててゴミ袋を縛って捨てに行きました。
履いたのはサンダル。
それで、帰り道はゆったりとした気分で歩きます。数日ゴミ箱を開けると香っていた納豆の匂いもとれるだろうし、天気も良い。
家に戻ったら気持よく朝食を頂こう。
玄関を開けて、部屋に入りお腹が空いているので取り敢えずバナナを一本取り出します。なんとも言えない歯ごたえと、口内にまとわりつく粘着感がたまりません。先端の黒い突起はエグいから出します。
バナナの前衛はエグい
いつだって前衛はエグいもんです。バナナの生きる必死がそこに詰まっているわけですから。時々間違ってその短いネジみたいな突起を食べてしまいます。そうすると、口の中に渋みが広がります。その時は思ったものです。
「あぁ、バナナにも辛い人生の一時があったのだな」と。
あんなに優しい彼らでも、心の片隅にはこれまでの人生で味わった挫折や迫害を、まるで裁縫箱の中に隠した過去の捨てられない一枚の写真のようにそっと仕舞っているのだと。
というようなコトを考えながら一本のそれを食べ終えると皮が残っていた。
また、残ったバナナの皮。
今さっき、生ゴミ捨てて来たばっかりなのに。まっさらな空のゴミ箱に入れる気は起きなかったので、庭の自家製コンポスト(ただ穴掘って蓋しただけ)にでも捨てようか。それとも面倒だからそのまま庭の片隅へ投げてしまおうか。
そう思いながら、コンロの上に置きました。
コンロの上で魂が抜けた廃人のようにぐったりとした皮。良く見れば中々肉厚で良い皮してるんです。スプーンですくったら何かしら取れそうなくらい厚みがある。オレンジの皮だったら茹で溢してオレンジピールを作る人がいるじゃない。マーマレードもあるじゃない。
でも、バナナの皮は使えない。
桃を皮ごと食べる人もいるし、種類によっては洋梨だって皮も食べる。蜜柑をむかずに噛んじゃう人を見たこともある。
でも、バナナの皮は食べない。
いや、もしかしたら出会っていないだけで食べる人もいるかもしれない。でも、ボクは皮ごとは食べません。
というのは、古い友人が横浜だか東京だかの輸入品倉庫で働いていたんだけど、時々仕事場がバナナ担当になるらしいのね。彼が言うには輸入されたバナナはおいしいから、各地で害虫やなんかが沢山ついてくる可能性がある。だから陸揚げすると一旦密閉した倉庫に入れて殺虫剤をかけるんだって。かけるというよりも薬で部屋を満たす感じらしい。
その時に庫内にいると死ぬぞって先輩に脅かされもするし、何より倉庫内に恐ろしいサイレンが鳴り響くんだと。
という嘘だか本当だかわからない話を聞いちゃったので皮は食べてみません。
薄暗い倉庫の中で迷ってしまい閉じ込められ、害虫駆除の煙が充満する中を逃げ惑うオレとバナナ!
いや、もしかしてバナナの前衛のあの黒い部分、あの渋みは彼らの生きた証なんかじゃなくて、その薬品の名残なだけなんじゃないのか?
それはいいとしても、何かに使えませんかね、バナナの皮。肉厚でとてもいい皮なんです。
確かに、台風の後で散れじれになった雲の夕焼けだってキレイではあるけれど実用できるかというと結構難しいですしね。使えないモノがこの世にあるっていうのもまた良いのですが。
とりあえず、今のところコンロの上に置いて半日ばかり眺めております。