『人間を守る読書』

記録:読み終えた本

 

四方田犬彦著 『人間を守る読書』 文春新書

言わずと知れた映画史のプロフェッショナル四方田犬彦さんによる本の紹介。

 

変わらずの深い学識と考察に満ちているので、勉学を怠って来た側としてはページの捲りにくいところもあります。しかし、これは四方田さんの本では常であるので仕方ない。彼は東大で学び、一方こちらは砂浜ごろ寝だったのだから。

とはいえ、彼の本は読み辛くても何かが書かれているので読んでしまう。(字が印刷されているだけで何も書かれていない本のなんと多いことか)もっと勉強しておけば良かったなと思うのはこういう時です。

 

書評・ブックガイド?

この『人間を守る読書』は別の本を紹介していくわけだけれども、それは本の内容というよりもその著者の視点がなにを露わにするかということの案内に感じます。

書物という巨大なピラミッドを遠くに眺め「これはクフ王の・・」と情報を解説するガイドではなく、彼らの行間から溢れる香や陰影、そこから何を汲み取ることが出来るのかを提示してくれる発掘人の目線。言い換えれば作家がそれぞれの意思を積み上げた「本」というものを読書する。その根源的な喜びや学びのお裾分けと言えるのかもしれません。

 

わたしたちの親世代は、家が狭くともとりあえずピアノを置き、子どもに習わせたものです。モーツァルトになる必要はない。しかし自分たちは戦争があってなかなか音楽を聴けなかったから、せめて子どもにはそういうものを体験してほしい──

──文化をもちたいと思わなければ、それは即ち文化がないということになるのだと思います。背伸びするということ自体が文化なんです。立派なことではないでしょうか──

『人間を守る読書』四方田犬彦  前書きにかえて  文春新書 p.12より一部抜粋

 

 

最後の第4章は100冊を無理に押し込んだ感があり前半に比べると遜色があるのは少し残念に思ったことを付け加えて、終わりにします。

 

 

 

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