.
相方が四歳の子供に「大きい花火って、お腹にど〜んときて不安になるよ、トイレ行きたくならない?」と、花火へ出発する三十分前に言った。四歳になる友人の子供は急に心配になってしまったらしい。不安な顔をして父親の足の間に挟まり、お家で待っていようか考えている。
彼女は結局、家にあった小さなミニクッションを持って行くことになった。それをお腹に当てていれば大丈夫だからと、相方が説明したのだ。
もっと近くに見えるはずだった花火は見当を誤り、遠く、下の方は見えなかった。誰もいない真っ暗な海岸に四人で座り、砂浜に潮が行き来する音を聞きながら花火を眺めた。
四歳の子はお腹に小さなクッションを抱えたまま花火を楽しそうに見ていて、時折クッションを咥えたりしていた。
全くもって静かな海。一本の邪魔な街灯以外はそんなに悪くもない場所だった。
花火が止み、歩いて家へ帰った。適当な夕食を拵え四人で食べた。その後で扇風機の正面で相方と子供が「ワレワレワ宇宙人ダ」ごっこをしていた。カメラを出そうか考えながら、その幸せな時間をのんびりと眺めた。
最後に僕の作ったミニチュアの木の家と車の模型でひとしきり遊んでから「今日はお泊まりしないで、お家で寝ます」と言って四歳の子はお父さんと帰って行った。来年はもう少し近くで見ようね。
八月最後の土曜日だった。
.
.