もちかえる

とっても安易なんですけど

もう一度 ” 空 “を撮ってみました。

窓際に置いた小机の前に座り、パソコンと睨めっこしていると急に涼しい風が入ってきました。外の暑さとはあまりにも温度差のある風だったので「これは雷雨が来るに違いない」と思ってパソコンを閉じ、家の裏側に回って西の空を見るとやはり暗くて重い雲がありました。東の空にも入道雲があり、天は行く先の暗雲を物語っています。

慌ててムービー用の防水カメラを取り出して三脚にセット、軒先のいつもの場所に構図を決めます。設定はタイムラプス(コマを一定間隔で飛ばした早送りのような撮影方法)で40分位取り続ける準備。この後、空は無料の劇場になると予想して。

しかし東には既に美しい世界がゆったりと広がっていて、劇場のロビーで開演を今か今かと待つ我々に壁掛けの絵画を見せつける。

 

 

暫くすると、遠くで地響きのような雷音が。

 

来た!

 

上空も重たさを増してくる。

 

アラーキーこと荒木経惟さんが最近撮っているもののインタビューで「空は飽きない」と言っていたが、まさにどの方角を見ても賛嘆の念しか浮かばない。

動画を回し始め、すっかり忘れていた開け放した方々の窓を閉めにいく。

こういう日は音楽もいらない。

近付く雷鳴と徐々に始まる雨音に耳をあずける。

 

 

 

 

屋根が一点一点灰色に塗り染められ、空色と親類の契りをかわして行く。

トンボは慌てて林の方角へ帰っていき、蝶はなぜか一本伸びた枝の先端に止まり光りと雨との共演を試みている。この天空で始まった壮大な劇場の中で、ソロパートを受け持とうと発狂的な自我を試みるその姿は、雨粒に萎縮したどの花よりも情熱的に見えた。

街は先ほどまで賑やかに昼食を食べていたとは思えないほど静まりかえり、行く末を案じている。

 

雷鳴

地響き

演舞

吹き込む雨粒と濡れ始めるMacBook

オイ!

慌てて閉める最後の窓に、蝶は飛び立っただろう。

あとは彼らに任せよう。どのみち人間の出番などないオペラなのだから。

 

 

おまけ。雷雨の空模様 Timelapse 【無音】

 

 

 

 

水出し紅茶の永遠

昼なのに雨戸を一枚だけ閉めて陽射しを避けたいような熱さの七月です。

水出し紅茶にはまっています。といっても、特別なことは何もなく平凡なティーパックを一つ、水の中へ投げ入れておくだけです。お湯も使いません。

 

どんだけぐうたらなんだ。

 

この方法のよい所は、最初濃いので少し飲んだらピッチャーに水道から水を足します。
それでまた冷蔵庫へ。小一時間後に喉が渇いたらまた飲んで、また水を足します。
段々薄くはなりますが、減らない。

 

そう、減らないドリンク!

 

コンビニで買ったジュースは直ぐ減っちゃうからね。
水を適時追加していくと減らないというのは最高。しかも味が段々と変わっていきます。
最初はエグ味も感じるくらい濃い目ですが、段々色が薄くなるにつれて甘みを感じるようになります。最終的には紅茶というよりピーチティーなんじゃないかと思うモノになります。

飲物の変身。魚でいうところの出世魚。

砂糖も入れないのにほのかに甘い。さっぱりだし。色は薄くなるけど減らない。
ありがとう夏。

 

朝は、オレンジジュースも飲みたくなります。
疑問をひとつ。

スーパーやコンビニで果汁100%オレンジジュースが100円とかで買えます。
でも、同じスーパーや八百屋さんでは生のオレンジが4玉で298円します。
それを、家に帰って全部絞ったところで大した量は取れません。

一体あの100円のオレンジジュースはどんなオレンジを絞っているのかな。
絞る手間をかけているのに生の果実より安いなんて不思議だ。
多分、絞り方が特殊なんだろう。
単純にジューサーで絞っただけでは取れないんだ。

きっと、小錦が30人くらいで「ドスコイ、ドスコイ、ツッパリ、ツッパリィ」といいながら潰していくのだと思う。そうに違いない。
それとも引退した福原愛選手が、椀子そばのように次々渡されるオレンジをラケットで潰していくのか。

それにしたって良く絞れているじゃないか。
中学の嫌みな数学の教師だってあんなには絞れないさ。

もしかしたら「濃縮還元」てヤツが重要なんじゃないかな。

なんだ濃縮還元て。

煮詰めるらしいです。オレンジ果汁を。
見てみたいね〜、ぐつぐつ煮立つ巨大なオレンジ釜。

輸送費用が安くなるらしいね。体積が半分なら送料も半分て。
そうか、東京湾で良く目にしていたあの石油を運んでいそうなタンカーの中身はブラジル産濃縮オレンジジュースだったってわけか。
それを日本の水道で元の濃さに戻せば100%濃縮還元オレンジジュースになるのね。

それを更に薄めればなっちゃんオレンジに、さらに薄めればバヤリースオレンジに。

 

なんだ、紅茶の水出しと同じじゃねーすか。

 

これからは濃縮還元紅茶と呼ばせて頂きます。
夏の成長盛りの中高生にオススメです。無尽蔵な胃腸に取り敢えず飲んどけ的な。

「薄い、味がしない」なんて愚痴をこぼすようなら、待ってましたとばかりに「そもそも濃縮還元はだなぁ」とうんちくを語りだすこともできます。
彼らより20年、30年長く生きて来た脳味噌を必死に絞って。

 

バナナの皮はもったいない空

前世は猿か白米だったんじゃないかと思っています。

それは、バナナと納豆を好んで食べるからです。

その二つにヨーグルトを入れて掻き混ぜると多分、ボクができます。

 

燃えるゴミ(生ゴミ)の日に、少し寝坊したので慌ててゴミ袋を縛って捨てに行きました。

履いたのはサンダル。

それで、帰り道はゆったりとした気分で歩きます。数日ゴミ箱を開けると香っていた納豆の匂いもとれるだろうし、天気も良い。

家に戻ったら気持よく朝食を頂こう。

玄関を開けて、部屋に入りお腹が空いているので取り敢えずバナナを一本取り出します。なんとも言えない歯ごたえと、口内にまとわりつく粘着感がたまりません。先端の黒い突起はエグいから出します。

 

バナナの前衛はエグい

 

いつだって前衛はエグいもんです。バナナの生きる必死がそこに詰まっているわけですから。時々間違ってその短いネジみたいな突起を食べてしまいます。そうすると、口の中に渋みが広がります。その時は思ったものです。

 

「あぁ、バナナにも辛い人生の一時があったのだな」と。

 

あんなに優しい彼らでも、心の片隅にはこれまでの人生で味わった挫折や迫害を、まるで裁縫箱の中に隠した過去の捨てられない一枚の写真のようにそっと仕舞っているのだと。

というようなコトを考えながら一本のそれを食べ終えると皮が残っていた。

 

また、残ったバナナの皮。

 

今さっき、生ゴミ捨てて来たばっかりなのに。まっさらな空のゴミ箱に入れる気は起きなかったので、庭の自家製コンポスト(ただ穴掘って蓋しただけ)にでも捨てようか。それとも面倒だからそのまま庭の片隅へ投げてしまおうか。

そう思いながら、コンロの上に置きました。

コンロの上で魂が抜けた廃人のようにぐったりとした皮。良く見れば中々肉厚で良い皮してるんです。スプーンですくったら何かしら取れそうなくらい厚みがある。オレンジの皮だったら茹で溢してオレンジピールを作る人がいるじゃない。マーマレードもあるじゃない。

 

でも、バナナの皮は使えない。

 

桃を皮ごと食べる人もいるし、種類によっては洋梨だって皮も食べる。蜜柑をむかずに噛んじゃう人を見たこともある。

でも、バナナの皮は食べない。

いや、もしかしたら出会っていないだけで食べる人もいるかもしれない。でも、ボクは皮ごとは食べません。

 

というのは、古い友人が横浜だか東京だかの輸入品倉庫で働いていたんだけど、時々仕事場がバナナ担当になるらしいのね。彼が言うには輸入されたバナナはおいしいから、各地で害虫やなんかが沢山ついてくる可能性がある。だから陸揚げすると一旦密閉した倉庫に入れて殺虫剤をかけるんだって。かけるというよりも薬で部屋を満たす感じらしい。

その時に庫内にいると死ぬぞって先輩に脅かされもするし、何より倉庫内に恐ろしいサイレンが鳴り響くんだと。

 

という嘘だか本当だかわからない話を聞いちゃったので皮は食べてみません。

 

薄暗い倉庫の中で迷ってしまい閉じ込められ、害虫駆除の煙が充満する中を逃げ惑うオレとバナナ!

いや、もしかしてバナナの前衛のあの黒い部分、あの渋みは彼らの生きた証なんかじゃなくて、その薬品の名残なだけなんじゃないのか?

 

それはいいとしても、何かに使えませんかね、バナナの皮。肉厚でとてもいい皮なんです。

 

確かに、台風の後で散れじれになった雲の夕焼けだってキレイではあるけれど実用できるかというと結構難しいですしね。使えないモノがこの世にあるっていうのもまた良いのですが。

とりあえず、今のところコンロの上に置いて半日ばかり眺めております。