接木する記憶

幼少の時分に

カブト虫展覧会に連れて行ってもらったことを忘れずにいます。

ヘラクレスや見たことのない外国のカブト虫が沢山いました。

生きているもの、標本になったものなど。

背の低い子供の世界に、それはジャングルに迷い込んだような印象を与えました。

夏の休み。

 

それは東京でした。

 

 

 

 

今日は渋谷で五時

ではなくて日比谷で六時半、又は十五時半でした。

 

大きな曲線を持った建築途中のビルを見上げたのは二年前でしょうか。

今そのビルは完成していました。

シネマコンプレックスタイプの映画館と屋上緑化的なテラスガーデンがあります。

それから、イエローなんとかというパリ発写真ショップ。

本屋さんと床屋さんとカフェが一体化したスペースと、水色の明るいシャツに丸眼鏡をかけ、カウンター越しに中々入ってこないお客さんを睨む店主のいる店。「眉間に皺ショップ」と名付けよう。

 

つまり立派でお洒落な場所になっています。

 

先日、カーテンが破れました。

 

一昨日、ジャムが終わりました。

 

帰りの電車は座れました。

 

動画の途中で眠りました。

 

東京湾にクジラが出現しました。

 

ティッシュから二枚ティッシュが出てきました。

 

些細な思い出のある場所。

紛れもなく誰の人生の害にも徳にもならない当たり障りのない小さな、しかし忘れることの不可能な出来事に感謝したい。

そうは言いながらも、現実にはあっという間に忘れてしまういくつもの日々をメモしておく。

住んでいる町の路肩の小さな石に一瞥をくれることで、その街角は日々再生される。

 

 

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