よく
見慣れたはずのものが
一段と美しく
いつも以上に近く感じる
そんな日が、稀というには少し頻度良くあります。
今日は台風が後頭部に貼り付いていました。
朝から後頭部にPrapiroonが貼り付いていました。
Prapiroonというのは九州から日本海へ北上していた台風の名前です。
揉んでもとれない粘着性があります。
だから張り付くというよりも貼り付く感じ。
寝っ転がっても取れないし、
首と肩をぐるぐる回しても変化はありません。
塩を舐めても、焼きそばを食べても剥がれません。
そこで少し考えました。
台風は水の仲間だな。
お風呂に入ってみることにしました。
もしかしたら、Prapiroonは「なんだ仲間か」といって別の人のところへ貼り付きに行くかも知れないと思いましたから。
ダメでした。
喫茶店へ行きました。
その前にカラーコピーを一枚とりました。
50円でした。
あと30円足すと、近所のメーカーの分からない自販機で得体の知れない謎ジュースが買えます。
喫茶店にはたまたま友人がいました。
彼女はスマートフォンで写真を見せて、「これ何色にみえる?」というのを店主に対して行なっていました。
店主は「ピンクと白」と答えました。
続けてこちらにも同じ写真が向けられました。
店主の答えを聞いていたので、もうすでに「ピンク」にしか見えませんでした。
「薄いピンク・・かな」
「え〜これピンクなの?ミントとグレーにしか見えない」と彼女はいいました。
それは女性ホルモンが多いとか少ないとかをテストする写真なのだと彼女はいいました。
コーヒーは濃い赤色をした縁の厚い器で提供されました。
彼女の靴は紺色でした。
テーブルにはこれから仕込むのであろう鶏卵が何パックも置いてありました。
こんなに使うなら、裏で白いニワトリを飼っても損はなさそうな量でした。
ニワトリはきっと放し飼いで、低い木の上に登ったりもできるようでした。
隣接する店舗から生みたての鶏卵が注文されるようになりました。
歩いて1分のところにある美容院ではトリートメントに使うということでした。
軍港に停泊している船から「しばらく戦争は起こさないようだ」という声が聞こえ、
「それならば大砲には卵を詰めてみよう」と偉い人が失言したそうです。
コーヒーを飲み終えてもPrapiroonはまだ後頭部に貼り付いたままでした。
それでも、久しぶりにあった友人が夫婦喧嘩の様子を椅子から立ち上がり、身振り手振りを交えながら実演してくれたので少し忘れることができました。
人は結果を予想出来ずに、些細なことでとても大切な人を傷つけることがあります。
マリー・アントワネットが100円でした。
マイケル・ジャクソンさんも100円でした。
町へ出て、歩いたのです。
古物屋らしい価格でした。
風がとても強かったので、サラリーマンの方々が集団で駅前の居酒屋さんへと吹き飛ばされて行くのを目撃しました。でも本当は強風のせいなどではないのかも知れません。
本屋さんへ寄りました。
キンフォークという名の雑誌を開くと仄かにウンチの匂いがしました。
インクの種類か、紙の種類なのでしょうか。
閉じて、別の雑誌を開きましたがこちらは安全でしたし、靴の裏にも付着物は見当たりませんでした。
編集部に電話はかけずにスーパーへ行きました。
ヨーグルトコーナーへ着くと目当てのヨーグルトは売り切れでした。まるでオイルショックでもあったのかというほどごっそりと空になっていました。
そのミルクショックのダメージを隠せずに精肉売り場へ辿り着きました。
虚ろに肉の赤や白を眺めていると、横から声がかかりました。
友人でした。
今日はこれからミートソースのパスタを作るということで、ミンチを物色しているのだそうです。
それから、むき海老などを買うのに付き合い、改札で別れました。
この人は会社員であるのに、いつ会ってもワイシャツにスラックスのズボンだけでスーツの上着を羽織っていないし、カバンも持っていません。
多分、帰りの電車内に毎日忘れて来るのでしょう。そう思えば気が楽です。
彼のミンチは色から判断するに、割引の牛ではなくて新品の豚のようでした。
フレッシュな豚
確かなことは分かりませんが少なくともその肉は今日、薄いピンクに見えるようです。